青い羽根を探して
第三章
春が過ぎ、季節は夏へと変わった。
いよいよ焦りを募らせるクリフだったが、じきにそれが、かえって良かったことを知る。
容赦なく襲う夏の日差しと暑さに喘ぎながら、山道を登るクリフは、春の月には聞いたことのない鳥の鳴き声を耳にした。
ピールリ、ピールリ、という美しいさえずりの主を探し、頭上を見渡すと、近くの木の上で、一羽の小鳥が鳴いている。
その鳥は、腹部が白いものの、それ以外は頭から尾にかけ、全て美しい瑠璃色をしていた。
思わずクリフが一歩近付くと、すぐに飛び去っていってしまったが、クリフはその鳥がいた場所から、目が離せなかった。
「青い鳥だ…」
その鳥はオオルリという、ミネラルタウンには夏の間だけ訪れる渡り鳥であることを、クリフは後に知る。
だが、この時のクリフには、この鳥が幸せの青い鳥に思えてならなかった。
青い鳥を見つけてから、クリフは、ますます躍起になってマザーズ・ヒルを歩き回った。
だが、時折、オオルリの姿を目にしたり、声を耳にすることはあっても、羽根は中々見付からない。
最初は、青い鳥に出会えてほっとしたクリフだったが、まただんだん焦り始めた。
(青い鳥がいても、羽根を見付けられなきゃ、意味ないよ…)
日々は飛ぶように過ぎて行き、溜息の回数と、肌の日焼けだけが増して行った。
そして、そんなクリフの変化は、誰が見てもはっきりしていた。
「クリフ、一体、毎日マザーズ・ヒルで何してるの?」
「何か悩みがあるなら、俺達に相談しろよ」
心配するマナやデュークに、クリフはぎこちない笑顔で「何でもないです、大丈夫です」を繰り返す。
「クリフ君、頑張るのも良いけど、無理はしないでね。暑いし、日射病にも気をつけなきゃ」
と、トマトジュースを差し入れてくれるミルクには、理由を話せる筈もなく、「ありがとう」を言うのがやっとだった。
大切な人達に心配をかけている、と思うと、昔のように罪悪感に飲み込まれそうになる。
(これだけ探しても見付からない。もう諦めて、マザーズ・ヒルへ行くのは終わりにしようか。)
何度もそう考えては、青い羽根探しを終わりにしようかとも思った。
それでも、一番大切な人の笑顔を想像して、再びマザーズ・ヒルへと向かうクリフだった。
――そして、夏の月も終わりに近付いたある日。
日も暮れかかって来た頃、山の中腹で、とうとうクリフは青い羽根を発見した。
切り立った崖になっている場所を歩いていると、目の前に、風で何か青い物が飛ばされて来た。
ひらひらと舞っている小さなそれが、今までずっと自分が探していた物だと解った瞬間、クリフは、それ目がけてダッシュした。
伸ばした手が、青く小さな羽根に触れる。
と、同時に、足の下に地面が無くなった。
(! 落ちる!!)
そう思う間も無く、体が空に投げ出される。
(ああ、もう駄目だ…)
体に受ける衝撃を覚悟してギュッと目を瞑った瞬間、どこか遠くから、知らない女性の声が聞こえて来た。
――あらあら、もう諦めちゃうの?
(……誰?)
予想していた衝撃は無かったが、クリフは、そのまま夢とも現実とも付かない世界へと意識を飛ばしていた。
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