青い羽根を探して



  第二章


「ない、なぁ…」
 足元を見ながら山道を歩き、クリフは溜息を吐いた。

 ワイナリーで青い羽根の話を聞いてから、一週間が経つ。
 あの日から、クリフの生活パターンは少し変わった。
 それまで、仕事後は、いつも教会へ向かっていたのだが、教会へは仕事の前に通うことにし、仕事の後は、暗くなるまでマザーズ・ヒルで過ごす。
 
 目的は、ただ一つ。
 青い羽根を見つけること。

 そして、その青い羽根を使って、牧場主のミルクに想いを伝えよう…。
 青い羽根の話を聞いた後、クリフはそう決心したのだった。

 ――滅多に雑貨屋へ行かないクリフは、青い羽根が雑貨屋で売られていることを知らない。
 青い羽根は、自力で探し、手に入れるものだと信じ込んでしまっている。

 だが、青い羽根など、そう簡単に手に入るものではない。
 鳥の来そうな水辺や、木立の中を探し回っても、精々見つかるのは黒や白、灰色の羽根だけだった。

「まずいぞ」
 疲労感は、嫌な想像をかき立てる。
(もし、他の男達が、先に青い羽根をミルクさんに渡してしまったら…)
 プロポーズを受けるかどうかに、順番は関係ないはずだが、クリフは気付いていない。
(グレイは、僕らと同じ別の町出身だし、こういう色恋沙汰には鈍そうだから、問題外としても…。
 ドクターは、よく薬草採集に山に来てるし、僕より鳥にも詳しそうだから、もう手に入れてるかも。
 リックは、鶏マニアが高じて、他の鳥の羽根もコレクションしてたりして。
 ああ、それにもうすぐ夏だから、カイもやって来る。
 カイは要領が良いから、青い羽根もなんかあっさり手に入れちゃいそうだよ…)
 本人達が聞いたら、怒りのツッコミが入りそうな想像を膨らませ、クリフは、ヨシ、と気合を入れ直した。
「早く、青い羽根を手に入れなくちゃ!!」 


     *     *     *


 ――一方その頃、教会では。

「カーターさん、こんにちは」
「こんにちは、ミルクさん」
「あれ、珍しい。クリフ君、来てないんですね?」
 クリフがいないことに驚いている、ミルクの姿があった。

「ああ、クリフなら、最近は朝に来てますよ」
 カーターが答えると、ミルクは更に驚いて、聞き返した。
「朝に?」
「ええ、何でも、仕事の後に大事な用があるらしくて。最近は毎日、マザーズ・ヒルに行っているそうです」
「そうなんですか…。でも、マザーズ・ヒルで大事な用って、何でしょうね?
 私みたいに、薬草や山菜採りってことはないでしょうし…」
と、ミルクは首をかしげた。

「さっきマナさんに会ったんですが、最近のクリフ君、何だか疲れているらしいんです。
 仕事はちゃんとやってるみたいなんですけど。クリフ君は、ちょっと無理するところがあるから、心配です。
 一体、マザーズ・ヒルで何やってるんでしょう?」
 ミルクがそう言うと、カーターは、安心させるように明るく言った。
「さあ、私にも教えてくれないんですよ。でも、きっと、彼にとって、凄く大切なことなんでしょうね。
 だから、私達も応援してあげましょう」
 その言葉に、ミルクも頷く。
「うーん、そっか、そうですね」

 そして、ミルクは最前列の椅子に座り、両手を組んだ。
「クリフ君の『大事な用』が、上手く行きますように」
 小さな祈りの声が聞こえたかどうかは判らないが、カーターは優しく微笑むと、十字を切った。





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