青い羽根を探して



   第一章


「青い羽根?」
「それ、何ですか?」
 ビタミン牧場のミルクも交えた、ワイナリーのティータイム。
 世間話の中、何気なくマナが口にした単語に、クリフとミルクは首をかしげた。
「あらあらあら。クリフやミルクさんのいた所では、この風習はなかったのねぇ。この町では、もうずっと昔からの伝統なんだけど。
 青い羽根っていうのは、プロポーズのための道具でね。
 男の子から女の子に青い羽根を渡したら、それは『結婚して下さい』ってことなのよ。
 勿論、女の子が受け取ったら『OK』って意味で、受け取らなかったら、『ごめんなさい』ってことね。
 全くもう、私も、うっかりあの時、青い羽根を受け取らなかったら、こんな人と一緒になってなかったんだけど…」
と、マナが説明し、笑いながら隣の夫を軽く肘でつついた。
「何言ってるんだ、俺が結婚してやらなかったら、お前なんて貰い手なかっただろう」
 デュークも心得たもので、笑いながら妻に応じる。
 喧嘩するほど仲が良い、とは、この夫婦のためにあるような言葉だ。
 クリフとミルクも、そんな二人を見ながら小さく笑う。

「でも、素敵ですね。プロポーズの際に、そんな風習があるなんて」
お茶を飲みながら、ミルクがうっとりと言うと、マナも、でしょ、と頷いた。
「やっぱり、年頃の女の子なら憧れるわよね、青い羽根。何となく、ロマンチックで良いでしょう?
 多分、『青い鳥』の童話からできた風習だと思うんだけど、幸せの象徴って感じもするし。
 そうそう、それに、大抵の女の子は貰った羽根を、結婚式のとき、ベールやブーケに飾ったりして。ちょっとオシャレでしょ?」
「わあ、それ良いですね。プロポーズで貰った物を、結婚式で身に付けるなんて」
 少しはしゃいだようなミルクに、クリフはさり気無く問いかけた。
「ミルクさんも、やっぱり、プロポーズのときは青い羽根貰いたい?」
「うん、勿論。だって、素敵じゃない。…あ、でも」
笑顔で即答してから、ミルクは少し頬を赤らめて付け加えた。
「私の結婚なんて、いつになるか…というか、一生できるか、解らないけど」
「あらあらあら、何言ってるの。こんな可愛くて性格も良い、素敵なお嬢さんを、男達が放って置く訳ないじゃない。
 青い羽根だって、この町で結婚するつもりなら、必ず貰えるわよ」
 マナが自信たっぷりに言い、ミルクは照れくさそうに、ありがとうございます、と呟いた。
 クリフは、そんな二人を眺めながら、「青い羽根か…」と小さく呟いた。


 そして、その日の夕方。
 ワイナリーでの仕事後、いつも行く教会ではなく、マザーズ・ヒルへと足を向けるクリフの姿があった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








  →


  創作   TOP   web拍手