12か月の物語
〜2月〜
その日の朝、<新米騎士>ライアットは、少しそわそわした様子で冒険堂にやって来ました。
そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、サララはいつものように迎えます。
「こ、こんにちは…! あ、えっと…表に飾ってある聖水を頂けますか?」
ライアットが少し声を上ずらせて言うと、サララは頷き、値段を言います。
普段なら、ここで値切り交渉があるのですが、ライアットはどこか上の空で、サララの言い値を支払います。
サララは不思議そうに首をかしげましたが、ライアットは、それにも気付きません。
聖水を受け取った後も、店内を落ち着かなくうろうろするライアットに、チョコは怪訝そうな目を向けます。
ようやくライアットが帰ろうとしたとき、サララは思い出したように小さな包みを取り出しました。
そして、ハイ、とライアットに差し出します。
「え、あ、ありがとうございます!」
頬を真っ赤に染めて、ライアットが包みを受け取ったそのとき。
「やあ、サララちゃん、今日も可愛いね」
そう言って、ライアットの同僚、ハイラインが店に入って来ました。
「あれ、ライアット、来てたのか。――ところでサララちゃん、今日が何の日か、勿論知ってるよね?」
ウインクしながらそんなことを言うハイライン。サララは苦笑して、ライアットにあげた物と、同じ包みを渡しました。
「ありがとう、サララちゃん! よーし、ライアット、去年は惜しくも僅差で負けたが、今年はリベンジだ!」
「ハイライン……。チョコの数で勝負なんて、そんな、レディの真心を勝負に使うなんて、騎士道精神に欠けるだろう」
ライアットは、力なくハイラインをたしなめます。
サララがくすくす笑う中、二人はあれこれ言い合いながら出て行きました。
* * *
『HAPPY VALENTINE! ――サララより』
チョコレートに同封されたカードを見ながら、ライアットは溜め息を吐きました。
(サララさんからチョコレートを頂けたのは嬉しいが、お店のお客さん全員が貰っているのか…)
――ライアットは知りません。
確かに、サララは、アイオンやブラム伯爵、果てはフンボルトさんやグスタフさんにまで、同じチョコレートをあげたのですが。
ライアット以外の人へのカードには、こう書かれていたのです。
『HAPPY VALENTINE! ――冒険堂より』と。
パートナーのチョコですら知らない、サララの秘密でした。
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ひっそりとライアット×主人公。
フンボルトさん出せなかったよ、ごめんなさい。
そして、今年もチョコの数勝負はライアットの勝ちでした。
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