12か月の物語



  〜1月〜


「こんにちは、サララさん!」
 お正月気分も抜けて来た、1月6日の昼下がり。
 冒険堂に、<勇者のタマゴ>アスカがやって来ました。
「これ、今日モンスターから手に入れたアイテムなんですけど…ヤッコフにも、何だかよくわからないそうなんです」
 そう言ってアスカがカウンターに置いたのは、一抱えの草の束です。サララは?と首をかしげました。
「薬草らしいですから、サララさんにあげます。いつもお世話になっているお礼です! それじゃ!」
 それだけ言うと、サララの返事も待たずに、アスカは店を出て行きました。
「やれやれ…」
と、戸棚の上にいたサララのパートナー猫、チョコが呆れた声を出しました。
「薬草だって、本当かなぁ? ボクには雑草に見えるけど」
 草を一本一本調べていたサララは、チョコに向かって首を振り、にっこりと笑いました。


     *     *     *


 ――翌日。
「あれ、こんにちは、サララさん!」
 サララとチョコは、アスカとその仲間、神官のジェドと魔法使いのヤッコフのいる広場へと向かいました。
 手には、大きな鍋を持っています。
「どうしたんですか、そのお鍋は?」
 サララがにっこり笑って、鍋のふたを開けると、ふわっと白い湯気が立ち上がります。
「――へえ、昨日の薬草が入っているんですか!」
 お椀とスプーンを受け取ったアスカが、サララの説明を聞いて感心したように声を上げます。
「ほう、そうか、噂には聞いておったが、あれは<春の七草>じゃったか…」
ヤッコフも目を細めて、お粥を自分の椀によそいました。
「ごぎょう、はこべら、せり、なずな、すずな、すずしろ、ほとけのざ…初めて聞く名前ばかりだな」
少し怪訝そうに言い、おそるおそる粥を口に運ぶジェド。
 そう、今日は1月7日。遠い東の国では、この日に七草粥を食べ、今年一年の無病息災を願います。
「――うん、美味い」
ジェドがそう言うと、アスカも本当だね、と頷きます。
「サララさん、ありがとうございます! よーし、見てて下さい。今年こそ魔王を倒します!」
握り拳でそう宣言するアスカに、サララはにっこり笑っておかわりをあげました。

 さてさて、今年は一体、どんな一年になるのでしょうか?
 




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  勇者グループと七草粥。
  どうやって、七草粥を冷めないように広場まで運んだかは謎です。








  →2月


  創作   TOP   web拍手