青い羽根を探して
終章
――古いものをひとつ
新しいものをひとつ
借りたものをひとつ
そして青いものをひとつ――
そんなマザー・グースを口ずさみながら、マナは満足げな笑みを浮かべ、控え室から顔を出した。
「お待たせ。ミルクさんの支度が整ったわ。もう、うっとりするくらい綺麗な花嫁さんよ!」
「そんな、マナさん。それは褒めすぎですってば」
クリフとデューク、カーターが待ちわびる中、マナに続いて、少し恥ずかしそうなミルクが姿を現す。
純白のドレスとヴェールに靴、真珠のアクセサリー、ピンクキャット草のブーケ、そして耳元に飾られた青い羽根。
その美しさに、新郎のクリフは息を呑み、デュークとカーターは口々に賞賛の声を上げた。
「ほぉ〜、こりゃあ綺麗だ!」
「やぁ、よく似合っていますよ」
でしょう?とマナは胸を張った。
「うちに代々伝わるドレス。新しいヴェール。サーシャから借りた真珠のネックレス。そして青い羽根。
しっかり、サムシング・フォーも揃ってるのよ。やっぱり、一生に一度の結婚式だもの。
細かいところまで、びしっと決めて、最高の思い出にしたいじゃない?
それにしても、クリフったら、凄いわよね! 自分で青い羽根を取りに行ったって言うんだから。
やっぱり、自然のものは、売ってるのより、少し小さいけど、色がずっと濃くて綺麗よね…」
「あ、マナさん!それは…!」
普段よりも饒舌に喋るマナを、ミルクは慌てて止めた。
だが、遅かったようで、クリフは、驚いて聞き返した。
「え、マナさん、今、何て?」
「ああ、だから、自然の青い羽根は、売ってるのより、色が濃くて綺麗ね〜…って」
不思議そうに、マナがもう一度言うと、クリフは愕然とし、ミルクは、しまった、という顔をした。
「…青い羽根って、売ってるんですか?」
暗い声でクリフが尋ね、ようやく、マナも事の次第を察し、決まり悪げに答えた。
「え、ええ、雑貨屋でね。でも、クリフの取って来たこれより、ずっと色が薄くて、見栄えが悪いわ。
こっちの方が、青くて綺麗ね。絶対、こっちの方が良いわよ〜」
「…わざわざ、山に探しに行くものじゃなかったんですね」
肩を落とすクリフに、ミルクは語気を強めて言った。
「そんなことないよ! 私のために、ずっと羽根を探してくれてたって知って、私、本当に嬉しかった!」
「…本当?」
「うん!」
力強く頷くミルクに、クリフはやっと笑みを浮かべた。
「そっか。なら、良かった」
「それに、この羽根は、よく見ると、ミルクさんの瞳の色と同じですね」
カーターが、ふと気付いたように言うと、マナとデュークも頷いた。
「あら、本当。ミルクさんの瞳って、綺麗な青い色だものね。この羽根と一緒だわ」
「そうだな。同じ色だ」
言われて初めて気付き、クリフとミルクは、顔を見合わせ小さく笑った。
「さあ、もうすぐ、式の時間です。町の人達も、そろそろ来る頃ですよ」
カーターにそう言われ、四人は、慌てて結婚式の最終準備に戻る。
やがて、カーターの言葉通り、招待された町の全住人が、続々と集まり始めた。
リーンゴーン リーンゴーン…
厳粛な式を終え、夏も終わりに近付いたこの日、ミネラルタウンに新たな夫婦が誕生した。
「おめでとう!」
「幸せにね!」
祝福の言葉が飛び交う中、晴れて夫婦となった二人は、教会の外へと出た。
「皆さん、本当にありがとうございます!」
「きっと僕達、幸せになります」
二人が、幸せ一杯にそう挨拶したとき、上空に、バサバサという鳥の羽音が響いた。
人々が空を見やると、青い鳥が一羽、教会の上空を旋回してから飛んで行った。
「青い鳥だ!」
驚いて、何人かが声を上げ、バジルが、目を細めて言った。
「あれは、オオルリだな。山から、町の方へ下りて来るなんて珍しい」
「オオルリ…」
鳥の名前を聞いても、クリフには、やはりそれが幸せの青い鳥に見えた。
(きっと、これも女神様のおかげだな。…ありがとうございます。)
ミルクは、眩しげに青い鳥を見送ってから、クリフに向かって微笑んだ。
「あんな綺麗な鳥の羽根だったのね。本当に、これは特別な羽根だわ。ありがとう。
こんなステキな贈り物と共に結婚式を挙げられて、本当に私、幸せよ」
「今まで君が僕にくれたものとは、比べ物にならないけどね」
クリフは、笑顔でそう答え、ぎゅっとミルクの手を握った。
「でも、これからは僕も、君に貰いっぱなしじゃなく、与え合って行けるように頑張るから」
だから――
と、クリフが続けた言葉に、ミルクは嬉しそうに頷いた。
「一緒に、幸せになろうね」
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“ミネなか”で「ロッドは自分で青い羽根を取りに行った〜」というのを知り、クリフにもやらせてみました。
クリフは、ミルクのためなら何でも頑張っちゃうと思うんだ。
また、この作品は以前、「トキワ牧場へGO!!」へ投稿させて頂きました。
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