12か月の物語



  〜4月〜


「綺麗ですわねぇ…」
 ほう、とうっとりしたように溜め息を吐いて、<華麗なる女盗賊>ルビィは桜を見上げました。頬が酔いのために、うっすら赤みを帯びています。
「本当に! 酒が美味いです」
酒瓶を片手にガーネットが言い、サララも盃に口を付けながら頷きました。
 桜は満開。空は快晴。絶好の花見日和です。
「そう言えば…」
と、それまで無言で桜を見上げていたサファイアが口を開きました。
「こんな話を聞いたことがあります…。桜の木の下には、死体が埋まっている、と…」
 ひゅううう――。
 そのとき、サファイア以外の三人と一匹の背中を冷たい風が吹き抜け――たような気がしました。
 誰でも、一度は聞いたことのある、有名な話ですが。暗殺家のサファイアの静かな冷たい口調で語られると、咄嗟の対応に困ります。
 チョコはブルッと震え、サララにぴったりと身を寄せました。
「…サファイア。あなた、もう少しTPOと自分の職業を考えてからものを言った方が良くってよ」
 ルビィが引きつった笑みを浮かべながら注意します。
「ああ…。そうですね、すみません」
サファイアはさらりと謝罪して、何事もなかったかのように、団子に手を伸ばしました。
 ルビィは、やれやれ、と言うように首を振り。
「でも、それも良いかもしれないわね」
と、桜を見上げながら、不意に小さな声で言いました。
 え? と、全員の視線がルビィに集まります。
「どういう意味ですか? ボス」
ガーネットが不思議そうに尋ねると、ルビィは桜から目を離さず答えました。
「こんな綺麗な木の下に埋められるなんて、最高の供養かもしれないわね、ということよ」
 そして、他の三人と一匹がしんとなってしまったことに気付くと、いつもの笑顔に戻って言いました。
「勿論、アタクシが死ぬのはずーっと先。世界制服を成し遂げてから、の話ですけれどね。オーホッホッホ!
 んもう、皆、なんて顔をしてるのよ? 飲みましょう。桜と、アタクシの美しさを祝って乾杯ですわ、オーホッホッホ!」
 ルビィの明るい声に、また和やかな雰囲気が戻ります。

 澄み切った青い空に、桜の花びらと、サララ達の笑い声が舞い上がります。
 それぞれに目標をもつ、四人の忙しい女性達。
 でも、こんな風に笑い合ってお酒を飲む休日も、きっと必要なのです。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  女盗賊グループと花見。
  ルビィ姐さんは桜好き。ガーネットは花より団子。サファイアは、花見なんて初めて。というイメージ。
  きっと女盗賊の3人はお酒好き&強いと思います。サララはちょこっと飲む程度。







  3月



  創作   TOP   web拍手