「おはよう」
(あ、古森君だ!)
バス停の少し前で古森君の後ろ姿を見かけ、思わず小走りになる。
眠気も、月曜の朝の倦怠感も、一気に吹っ飛んで行く。
* * *
「おはよう、古森君。一緒に学校に行こう?」
「…僕は、いい」
そんなインターホン越しの会話を、一体何度繰り返しただろう。
「もう、来ないで」と言われて、泣きそうになったこともあった。
それが、若王子先生との課外授業の後くらいから、インターホン越しじゃなくなって。
私の「おはよう」に、ドアを開けてから、「おはよう」と返してくれるようになった。
そして、スープをご馳走になって、一緒に水族館に行った後。
とうとう、古森君は、学校に出て来てくれるようになった。
もう、私が彼の家に迎えに行くことはない。
だから、毎朝会えるとは限らないけれど。
* * *
「古森君、おはよう!」
追いついて、つい大きな声をかけた私に、古森君は少し驚いたように振り返ってから、はにかんだ笑顔になった。
「おはよう」
「学校まで、一緒しても良い?」
「う、うん、勿論!」
隣に並んで尋ねると、古森君は力一杯頷いてくれた。
「ふふ、良かった」
そして始まる、学校に着くまでの他愛無いお喋り。
毎朝会えるとは限らなくなったけれど。
偶然会えた朝、古森君は、必ず笑顔で「おはよう」をくれる。
私から言うときもあるし、古森君から言ってくれるときもある。
「…なんか、良い事あった?」
ずっとニコニコ顔の私を変に思ったのか、古森君が首をかしげて聞いて来た。
「ううん、ただ、気持ちの良い朝だなーと思って」
私が首を振ると、古森君は空を見上げてから、「そうだね」と頷いた。
空は秋晴れ。雲一つない、抜けるような青空だ。
でも、たとえ今日が雨や曇りでも、気持ちの良い朝であることに変わりはない。
古森君に会えて、「おはよう」が言えて、古森君から笑顔で「おはよう」が返って来た。
そして一緒に学校に行ける。
これを、ごく普通の日常と呼べること。
それが嬉しい。
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古森君に笑顔で「おはよう」と言われたら、その日は最高の一日になると思うんだ。
…古森君の津軽弁が微妙ですみません。
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