君に会いに行く


 (※この話は、とあるクリスマスソングが元ネタになっています※


 
『学校のパーティー、今終わったよ。これから会いに行くね』
 パーティー会場の体育館を出てから、美咲ちゃんにメールを送る。
 暖房の効いてない廊下は大分寒いけど、もうすぐ美咲ちゃんに会えると思うと、心の奥が温かい。

「お、古森、これから俺達カラオケ行くけど、来るか?」
「うん、古森君もおいでよ!」
 昇降口で、クラスの友達が声をかけてくれたけど、首を振る。
「ごめん、これから、彼女と会うはんで…」
そう言った瞬間、えー、と大ブーイング。
「なんだよ、友情より恋愛かよー」
「結局、俺らより美人の彼女かー。見損なったぜ」
「こちとら、淋しい独り身の傷の舐め合いだっていうのにさ。古森君、ひどい!」
「ずるい!」
「ここは、友情を取ろうよ!」
 散々にののしられ、小突かれたり、ぶたれたりしたけど、皆、顔は笑っている。
「ご、ごめん。じゃ、皆も楽しんで!」
 羽交い絞めされそうになったのを何とか交わして、靴を履き替える。
「バイバイ、古森!」
「メリー・クリスマス!」
「良いお年を!」
 口々に言ってくれるクラスメートに、「良いお年を!」と手を振り返し、一足先に外に出た。


     *     *     *

 
 オラが美咲ちゃんと付き合い出して、初めてのクリスマス・イブ。
 学校のクリスマスパーティーは休んでも良かったんだけど、美咲ちゃんが行った方が良い、と言うので、美咲ちゃんとはパーティーの後会うことになった。
 美咲ちゃんも、友達と一緒にクリスマス・ライブに行ってるらしい。
 
 校門を出たところで、美咲ちゃんから返事が来た。
『パーティー、楽しかった?こっちもさっきライブが終わったよ。楽しかった。
 それじゃ、駅前で待ち合わせしようか。』
 そんなメールの下に、大きなツリーの写真が付いていた。
『うん、こっちも楽しかった。それじゃ、またすぐ後で。』
 オラもメールを返し、少し足を速める。

 幾つ目のツリーの写メールだろう。
 ツリーだけじゃない。サンタクロースやイルミネーションなど、美咲ちゃんからは、色んなクリスマスの写メールが送られて来る。
 その影響で、オラも、クリスマスの飾りに目を留めるようになった。
 綺麗だな、と思ったら写真に撮って、美咲ちゃんに送るようにしている。

 去年まで、クリスマスは大して好きじゃなかった。
 賑やかな街から、自分だけが置いてけぼりにされている気がして。
 でも今は、大好きだ。
 イルミネーションで飾られた街は綺麗だと思うし、はしゃいでいる人を見ると、自分も何だか嬉しくなる。

 こんな風に思えるようになったのは、彼女のお陰だ。
 自分が素敵だと思うものを、オラに教えてくれて、オラが素敵だと思うものに、共感してくれる。
 そんな彼女と、イブの今夜、会える。なんて素敵なんだろう。
 

     *     *     *

 
 駅前の交差点で、靴紐がほどけているのに気付いた。
 ちょうど赤信号だったから、かがんで結び直していると、周りで「あー!」と歓声が上がった。
「凄い、流れ星!」
「本当、凄いね!」
 ビックリして顔を上げるけど、勿論、流れ星はとうに流れ切った後。
――なしてオラは、こういつも間が悪いんだべか……。
 がっくりしながら、靴紐を結び終え、立ち上がる。

 でも、周りの人達がはしゃいでいるのを見ていたら、こっちも何だか嬉しくなって来た。
 クリスマス・イブに、流れ星。
 それだけでも、凄いことだ。
 オラは見れなかったけど、ちゃんと見れた人達がいて、喜んでいる。 
 それは凄く、素敵なことだ。

 はぁっと白い息を吐いて、夜空を見上げる。
 さっきの流れ星を、美咲ちゃんが見ていると良いな。
 でも、今頃は電車の中かな。

 
 早く会って、伝えたい。
 終業式と、二学期の成績のこと。
 クリスマス・パーティーが楽しかったこと。
 帰りに友達の誘いを断ったら、冷やかされたこと。
 流れ星が流れたこと。
 オラは見れなかったけど、ちゃんと見れた人達がいたこと。
 それを見て、こっちも何だか嬉しくなれたこと。
 美咲ちゃんが、流れ星を見てると良いな、と思ったこと。
 今日、オラが素敵だと思えた、オラにとってのプレゼントを、全部。

 彼女の方は今日、どんなイブを過ごしたんだろう。
 早く会って、聞きたい。
 彼女が素敵だと思えたこと、全部。
 それは、オラにとってもプレゼントだから。

 そして、その後、二人で一緒の時間を創りたい。







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  古森×主で、卒業後、初めてのクリスマス。
  最初の注意書き通り、話のモチーフとなった曲があります。
  BUMP OF CHICKEN『Merry Christmas』(こちらで公式アップのPVを視聴できます)
  大好きな曲で、なおかつ、古森君とイメージが重なったので、勝手に使わせて頂きました。
  …全体としてはちょっと違うのですが、後半が本当に曲のまんまです。すみません。

  デイジーはクリスマスなど、イベント大好きっ子なイメージがあります。
  古森君は、はしゃいでいるデイジーを見ているうちに、自分もイベントを楽しめるようになっていくとオモ。
  …「2人のクリスマス」のシーンは全然書いていないのですが。
  なんとなく、2人が繋がっている感じが出ていれば嬉しいです。

  ではでは、皆さん、Merry Christmas!










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